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二十渉・雪山セミナーライン講座 第16回

雪山セミナーで継続して多くのことを語りました。まとめに入ります。   
雪山登山は、カロリー消費の多い体力を必要とします。登山をしているから一般の人よりも体力があると思っていると、実際には、僅かに背筋力が優れているに過ぎず、体力調査の結果、体力差はなく、重要だと思われる酸素摂取能力も差がないという現実です。

雪山登山は、特に危険因子が他のスポーツに比べ格段に多いと云うことも現実です。やはり雪山登山を安全に楽しむ為には、日常生活を規則正しく、暴飲暴食をしないで体に負担をかけないように暮らし、コンディショニング、トレーニングを定期的に行うべきです。

山における危険は、老若男女とわず降りかかってきます。防御技術が必要であり、伴に山行する仲間同士、守り合わなければなりません。現代は、お互いを守り合うということが希薄になっているように思います。クライミングロープを結びあいお互いの安全を守り合うアルパインクライマー達は、絆のロープと思っています。

実際の山では岩稜歩きや悪場をフイックスロープや鎖、針金、切れそうな作業用ロープ、等に助けられて通過しているのが現状です。

もっと積極的に、お互いを守り合うクライミングロープを使った確保技術、基礎のクライミング技術を学んでください。チーム、仲間、パートナー、お互いを守り合う山仲間でありたいと思います。転滑落を防ぐための技術、是非とも学んでください。例えば、雪の西穂高岳へ初心者は独標迄です。

ピッケル、アイゼンワーク、ローブワーク、確保技術を学んで行動で来る人達は、西穂高岳の山頂を安全に往復出来ます。初級技術と位置付け、基礎技術と思って下さい。お互いに訓練して守り合えると良いチームなのですが。

どんな小さな組織の中でも教育訓練機能を構築してください。以前、山岳会は同好者の集団ですが、登山を実践するチームであり事故などに関する相互扶助的な機能を持ち新人、入会者を教育する機能もある組織でした。事故の際の救助は公助に依存し、事故に対応する機能を失っています。山岳会が単に自分のバートナーを得る場に過ぎなくなっています。クラブ組織と云うより仲好しサロンになっています。そんな組織の中でも、登山は多様化しているのですから、分化が進みます。

組織が矮小化し緊急時のの対応が低下しています。文科省登山研修所、労山、岳連、ガイド連盟、ツアー会社等の募集するリーダー研修会、各種技術講習会、労山であれば中級、初雪、初級ハイキングなどの募集する企画に山岳会員や一般の方々が参加します。

しかし、たかだか1週間や10日間の期間で技術を習得することも、またリーダー能力を身に付けることは出来ません。自分の所属する組織へ学んだことを持って帰り、クラブの中で訓練を繰り返し山行を重ねるという方法論を示すことが大事であると思っています。同じチームで山行しながら、個人が好き勝手に動いているとしたら危ないですね。お互いに研鑽しながら守り合える山仲間に成長していって下さい。

危険に対する判断力は実際の登山活動の中でしか身に付きません。訓練されていないなあと思うことが多々あった雪山セミナー実技山行でした。5回を終えました。研修会や講習会の難しさが有ります。何故なら実践的であればあるほど、事故率は高くなります。登山は危険に対する判断力の養成が基本に有り、実践的でなければ判断力は養成されないと思います。

私は今回の雪山セミナーを開講するにあたり、二十渉の中で何処まで指導できるか真剣に深く考えました。ロープワークの身に付いていない会員に実践登山はどのレベル迄と考えました。

しかし、こうも思いました。10人ちょっとの会員のクラブでしっかりした教育、遭対を持っていることは、素晴らしいことです。二十渉の中で、教育、遭難対策、防御技術の構築をクラブの会員皆で進めませんか。私は、ローソクの灯りが消える前の年齢になりました。
お互いの安全を守り合える登山者が二十渉の中で育って行くことを願い雪山セミナー座学を終了します。  了。