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二十渉・雪山セミナーライン講座  その6    2022年12月15日

雪山の登山、登山ルートの選択 
積雪期の山岳地域では、山麓から山頂迄、雪質は様々に変化します。無雪期の登山を十分に体験していないと雪山を歩くことが難しく感じると思います。

斜面での鉛直方向等体感で即時に分からないとバランスを崩します。斜面では、その時とっさに反応してネクストステップがでないと転落、転倒、滑落に繋がります。夏山で登山をしっかり体験していないとバランス良く不整地は歩くことが難しくなります。基礎的訓練を十分に積んで来たでしょうか。刻々と変化する雪山の条件に対応できる技術を体得するには必要な事です。

雪崩の危険は登下降のルートの選択を慎重にしましょう。山スキー、バックカントリースキーでは、登下降し易い谷筋を選ぶ事が多くなります。しかし、谷を登り最後の詰めで雪崩に合うことが有ります。谷の下部にいて上部の雪の状態を知ることは、極めて難しいと思います。谷筋は雪崩の危険地帯と云う認識をまず持って下さい。

私が谷筋をルートに選択する場合、安定している下部を登り、上部に不安を少しでも感じたら下降するなり、尾根にルートを変更します。ルッチブロックテストで雪の判断ができても、稜線の雪庇の崩壊、雪崩の誘発、吹き溜まり等は、稜線での強風やクライミングカレントによる危険が待ち構えています。不安を感じながら、まだ大丈夫だろうと登っていると、危険度は飛躍的に増します。雪崩遭難のパターン、定石になります。

一方、尾根にルートをとった場合ですが、尾根は風の影響を強く受けて積雪の変化が激しいです。風上側はウインドクラスト、シュカブラが形成されます。風下側には、雪庇が発達し、風の渦巻く所は、吹き溜まりができます。尾根上では大量の降雪があった場合、スノーリッジ等尾根幅のない所が酷く危険になります。尾根幅の広い所、無木立の斜面では、表層雪崩、雪板雪崩の危険地帯となります。尾根をルートに選択したから安全と云うことではありません。雪崩の危険は、単純な知識では対応できません。

ルートの選択判断が、リーダーの判断がとても大事になって来ます。リーダーの判断の誤りがパーティー全員を取り返しのつかない窮地に直面させることになります。技術の問題以上に雪山ではリーダーの判断がとても重要になります。長い指導者としての経験から、私が指導者として留意していることは、指導する側が、雪山として楽な山岳を選ばない、同じ山で、講習、研修を長く続けないと云うことです。

指導者、講師も人です。慣れほど怖いものは有りません。雪山にどっぷりつかれる。雪にまみれる登山を体験させて上げたいという思いが有ります。今シーズンの二十渉、雪山セミナーは間もなく山行が始まります。その前に、座学をと考えラインセミナーとしました。山行の時に私の技術、体験を伝えて行きます。ラインセミナーを一旦終えます。
では雪山でお会いしましょう。
二十渉・雪山セミナーライン講座  その7 2023年1月4日

登山は、他のスポーツと比較すると(1)寒冷、(2)低圧、(3)長時間の行動、といった特徴がある。消費カロリーの面から考えても、フルマラソンで2800kcal、夏山縦走では1日、3800kcal~4500kcal、冬山縦走では4500kcal以上が消費される。また登山の場合、これほど多くの用具(装備)を必要とするスポーツは有りません。登山には、多くの楽しみ方が有りますが、クライミングを含む登山では用具はさらに多くなります。

高所登山、ビッグウォールクライミングがその頂点に有ります。危険度という面から視ると登山は、事故率の高いスポーツです。ヒマラヤでは登山者の3%近くが死亡しています。文部省登山研修所の調査では過去600名の講師が研修会に参加していますが、その2.5%が登山中に死亡しています。骨折などの傷害の面では40%近いデータが有ります。

私の交流している先鋭的な人達の事故率はさらに高いと思いました。登山者の事故の原因としては、転滑落、低体温症が2大原因です。次いで雪崩が有ります。転滑落に対処するには、危険な場所ではクライミングロープを使用し、お互いに確保技術を用いて行動すると、転滑落を避けることが出来ます。登山道における不注意による転びは登山者、個々の心構えで多くは回避出来るが、条件的に危険な場所では、まずクライミングロープを使用しましょう。登山の基礎技術として、私は、会員には岩登り技術を習得して欲しいと思います。


二十渉・雪山セミナーライン講座  その7 2023年1月4日

登山は、他のスポーツと比較すると(1)寒冷、(2)低圧、(3)長時間の行動、といった特徴がある。消費カロリーの面から考えても、フルマラソンで2800kcal、夏山縦走では1日、3800kcal~4500kcal、冬山縦走では4500kcal以上が消費される。

また登山の場合、これほど多くの用具(装備)を必要とするスポーツは有りません。登山には、多くの楽しみ方が有りますが、クライミングを含む登山では用具はさらに多くなります。高所登山、ビッグウォールクライミングがその頂点に有ります。

危険度という面から視ると登山は、事故率の高いスポーツです。ヒマラヤでは登山者の3%近くが死亡しています。文部省登山研修所の調査では過去600名の講師が研修会に参加していますが、その2.5%が登山中に死亡しています。骨折などの傷害の面では40%近いデータが有ります。私の交流している先鋭的な人達の事故率はさらに高いと思いました。

登山者の事故の原因としては、転滑落、低体温症が2大原因です。次いで雪崩が有ります。転滑落に対処するには、危険な場所ではクライミングロープを使用し、お互いに確保技術を用いて行動すると、転滑落を避けることが出来ます。登山道における不注意による転びは登山者、個々の心構えで多くは回避出来るが、条件的に危険な場所では、まずクライミングロープを使用しましょう。
登山の基礎技術として、私は、会員には岩登り技術を習得して欲しいと思います。
二十渉・雪山セミナーライン講座 その8     2023年1月5日

転滑落、道迷いが最近の二大原因となっています。ここ数年の道迷いの増加は登山者層全体の高齢化と関連付けられています。私は、その事よりも、地図を出し、コンパスを使い現在地確認をポイントごとにしていくことが無くなっているのではと思います。

モバイル依存している登山者が増えているからではと考えています。老人、ご隠居は、知恵が有るので山行毎に訓練していきますから。バッテリー頼みのモバイルは、低温の雪山では要注意の用具ではないでしょうか。因みに、私は使った事が有りません。

地図、コンパス、高度計があれば、国内、海外の山⛰️、で活動するには十分でした。私の若い頃、50年前では、高度計が最新の用具でした。一般登山道での事故は、多く下りで起きます。下りのやや急斜面で土が露出し、樹林帯で、木の根の露出が有るところで事故が多く有ります。50歳から60歳の女性事故の60%が転倒です。これは、要注意です。

リーダーは、歩くペース配分を、下りでは特に考慮しないといけません。アシックスの研究所では特に、女性の50歳からの足の変化を警告しています。足は個人差の大きい、登山者にとって地面に接するパーツです。足にあった、フィットしたものを履かれることを、お薦めします。蛇足ですが、データでは、好天時に事故は大多数を占めます。これは当たり前で、登山者の多くが、敢えて悪天候下では行動しないためです。

低体温症、凍死は、山岳などの特殊な環境で起きると、思われていますが、データでは毎年1000人が犠牲となっています。因みに、熱中症では毎年600人以上が犠牲となっています。山岳での低体温症や、熱中症は、もっと身近な事として認識した方が良いと思います。どちらも水分の取り方、十分に補水されなければなりません。これは雪山で大事になってきます。

出来れば、500ccのテルモスよりも1L近くのものを、お使い下さい。私は、山テルモスと、もう1つ同じ容量のテルモスを持って行きます。耐熱性のあるボトルにホットポカリを入れて1Lですが保温ケースに入れ別に持参しています。2L以上ザックに水分がある云うことです。

遭難事故を起こさないために、若い登山者に沢山の講義をしてきました。その折、ローマのベリギリウスが[幸運は、大胆な人たちに笑いかける。]と言っていますが、山では大胆ではなく臆病に、少しずつ体験の範囲を広げて訓練して行って下さい。と伝えていました。笑いかける前に奈落への例を見すぎました。お互いがカバーしあえ、安全に登山を楽しめるのが山岳会の良いところです。これからも、宜しくお願いします。
二十渉・雪山セミナーライン講座 その9  2023年1月6日

登山者は、なるべく不必要な発汗を避ける努力をしなければならない。小まめに着脱し体温調節する事です。いくら良い素材、形状のウエアーでも、これをしないと体温を不必要に奪われ疲労の原因となります。

使用する側の問題も大きいのは他の用具と同じです。夏山といえども北の山、日本アルプスなどの高い山では、凍死遭難が有ります。夏山装備の中にアンダーウエアー、長袖、長タイツ、ウール、ウール混紡を1セットとシュラフカバー(ビバーク袋の代用)が有れば避ける事が出来たと思われるものが多いです。

体熱を奪われないように留意すれば避けることが出来る遭難が有ります。早め早めの対処が登山者、自身を守る最上のクロージングではないでしょうか。ウーリー-スティックのように、30時間近く動き続ける体力を持っている人は別ですが、ヒマラヤにおいても薄着で、動き続ける限り人は発熱しているので大丈夫の理論は、止まってしまえば、彼も亡くなりますね。それほど紙一重の行動力だったのです。

低体温症への対処はこう考えて下さい。低体温症にかかれば、体温34°c迄に下がるには、ある程度の時間があります。それ以降ほ急激に下がります。対処、処置として、風を避ける(テント、ツエルトなど、シェルターとしての雪洞、イグルー)保温、シュラフ、カバー、防寒具)加温(湯タンポ、ストーブ、コンロ、焚き火)の3つが必要です。

ツエルトや用具を持っていても、それを使えない状況迄、使っていない遭難が多いのが現状です。もっと早めの対処をすれば助かっていたと思います。さて疲労ですが、どう身体に影響を与えるのでしょうか。疲れると、技術、テクニックを失っていきます。プレッシャーが有ると動きがより固くなります。

危険度の高い所、露出感のある所で滑らかな動きが出来なくなります。疲れていても、何度も繰り返して体得した技術、テクニックは徐々に疲労やストレスに対して対応力を高めています。雪山での技術の習得の目安は、ルートを少ない労力で登ることです。身体の動かしかたが徐々に身に付いてきます。斜面での余分な蹴り混み方もしなくなります。

少しの力で効果的に動けるようになっていきます。私は、全体を見ていますので無駄な動きはアドバイスしていきます。雪山では夏山と違う危険が有ります。事故寸前のインシデントなどは、体験として会の仲間には伝えて行きましょう。危なかったわ!で済ませないようにしましょう。次はアクシデントになる可能性があります。
次は雪崩による、埋没者を奇跡的に7名、救い出した体験を伝えます。ではまたね。
二十渉・雪山セミナーライン講座  その10 2023年1月11日

今回は、雪崩遭難の奇跡的に7人救出の体験を伝えようと予告していました。今回の雪山で、この体験を語りました。他に雪崩による遭難に出動した体験が2件有ります。これも文章にするより、山行の中でお伝えしようと思いました。

今回は、ピッケル、アイゼンの話にします。
氷斧、ピッケル、ピオレ、アイスアックス。シュタイグアイゼン、クランポン。と呼称されている用具です。ピッケルが先に氷河の山、雪山で導入されました。それによりカッティング技術が生まれました。初期のピッケルはシャフトが長く現在の物と比べると形状が違いました。現在の物は、アイゼンの形状の変化と大きく関係しています。

悪魔の爪と呼ばれた時代がアイゼンには有りました。積雪期に温度変化の少ない欧州アルプスの山々では、ピッケル、アイゼンの発明とアルプスの黎明期から初登頂期、より難しい、アルピニズム時代を迎え、形状の発達、強度と軽さの追及が行われ、現在の物となっています。

日本の寒暖の変化の有る、雪山ではピッケルの発明はなく、わかんじき、と呼ばれるラッセル用具の発達と硬い雪に対応するための、鉄(かな)かんじき、と呼ばれる、簡易アイゼンが生まれ、使われました。私と雪山に行かれた方には、硬い雪に対応するためのキックステップ技術を使うことを薦め、アイゼン、ピッケルの使用を不必要にしません。歩行力を身に付けるためです。

何故なら用具は、それが必要な山、ルートに対して生まれるものだからです。
行く山域、ルートにより必要となります。どのような状況で使うか、また使用方法をこれからの雪山セミナーで行います。どちらも、尖った形状ですので、他の装備の破損や怪我にならないように、パッキング、携行して下さい。特にボトル、ガスカートリッジ、ツエルトなどは、要注意です。
では、次回、三回目の雪山セミナー山行は硬めの雪山を計画しましょう。では、また。